マーケティング・デザイン講座 1

はじめに

中小企業・零細企業・個人事業主では、大企業のようにマーケティング部署があったりデザイン室があったり、マーケティング担当者やブランディング担当者がいることは稀で、社長や一部の経営陣が業務を兼ねなければいけない。なかなかにたいへんな負担が集中する状態であることが多いですね。ですから、外部のスタッフに任せるという方法にならざるを得ません。皆さんはどこに協力を求めますか? コンサル会社? 広告代理店? 制作会社?

長岡デザイン事務所では、そうした企業や店舗の「なにをどうしたらいいのか分からない状態」のところから、ご相談にお応えしております。このコラム「マーケティング・デザイン講座」では、デザイナーである私がデザインの立場から、マーケティングについて基本的なところをできるだけ分かりやすく少々乱暴にお伝えしていきます。

ユーザー利益より収益優先の時代

マーケティングの世界ではすでに大きな変革が起きています。AIのインパクトも大きいですが、それよりももっと早くからそしてAIと同じくらい大きな影響を出していることがあります。結論から言うとそれはGoogleの方針転換です。世界最大シェアの検索エンジンを持つGoogleは、かつて、インターネット世界のユーザー利益を最大にするというかなりリベラルで理想主義的な企業方針を示していました。設立以来Googleは実際にそのように動いていました。私たちは、優良な検索エンジンをはじめ様々なサービスを無料で使えるという利益を享受してきたのです。「Don’t be evil(邪悪になるな)」という社訓が有名です。

ところがこのインターネットの巨人はすでに収益優先へ方針を転換しています。数年前から検索結果が広告だらけになり、今や広告収益率の高いyoutube動画が検索結果に多く表示されるようになったことでお気づきの方も多くいらっしゃるでしょう。

SEO対策という幻

検索エンジンは価値ある情報のあるウェブサイトを上位に表示してくれるという建前がありました。だから「価値あるサイトだと思わせるテクニックがありますよ」とSEO対策を売り込むコンサルティングが多くいらっしゃいました。そして、実際に効果的だったのです。SEO対策にこそ最大の予算を当ててやるべきだと喧伝されていましたね。

2024年、それはすでに幻です。あのタレントの4文字の叫びを真似したくなりますね。あと2、3年で、もうなにをやっても広告に叶わないと言うでしょう。Metaを初めとしたSNS勢が収益最優先でサービスを行っていることは自明でしたが、あらゆるインターネットメディアが収益優先になりました。

お金を出してSEO対策をこねくり回すくらいならその予算を広告費に充ててください。SEO対策は基本だけで十分です。もちろん基本をしっかりやった上でのお話です。そもそも最高のSEO対策(検索エンジンに最適化させる)とは、情報として価値あるサイトをつくれば良かったのです。裏ワザ的なテクニックを駆使して検索エンジンを騙そうとするからイタチごっこのように何度も何度も手を加えることになるのですから。

もっとも効率のいいマーケティング手段は広告

時代が元に戻っただけかも知れませんが、結局、圧倒的に広告が効率がいいのです。費用対効果を考えるとどうしても広告が良いという結論になります。

資本力のない事業体では、手広くたくさんの選択肢を選べません。何かひとつを選ぶなら、やるべきなのはリスティング広告(検索連動型広告)です。ターゲティングがもっとも正確で結果を分析しやすいからです。次に考えられる手段はいくつかあります。Meta社の詐欺広告で問題が露見し、少し不透明な状況ではありますが、SNS広告も高い効果を出しています。そしてyoutube動画広告はたいへんな伸びを見せています。ディスプレイ広告&アフィリエイトもまだまだ捨てがたいですね。

昨今の状勢として、ユーザーは増大する広告に忌避感を持ち始めています。それでも広告はさらにどんどん増えていくでしょう。インターネット広告の状況については下記リンクをご参照ください。

2023年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(電通)

店舗や商品、会社のジャンルや目的によって選ぶ手段は変わります。ソーシャルメディア向きの商品かも知れないし、従来のマス広告がいいという業種だってありますし、デジタルではなくローカル紙などの媒体を使う方が合うというものもあります。なにを選びどこに予算を投入するか、よく考えてチャレンジする必要があります。

広告に加えてもうひとつなぜか見落としがちなメディアがあります。それについては次回とします。